現在のマット界には「器量」が足りない!?

現在のマット界は「器量」という言葉が旬(?)であるようだ。谷川貞治FEG社長が、ダナ・ホワイト(Dana White)UFC社長に対して、発言した言葉が「男の器量を見せろ!」。これは、マット・ヒューズ(MATT HUGHES)の6.2『Dynamite!! USA』参戦を訴えた際に言ったものだ。これとは別に『週刊プロレス』(2007/5/9号 No.1366)巻頭インタビューで、猪木の語った言葉の中には「器量がないからだろうね」
今回はそんな「器量」について書いてみたい。

ダナ・ホワイト(Dana White)UFC社長に「器量」はあるのか?

昨年、谷川貞治FEG社長の「器量」で、UFCへホイス・グレイシーが貸し出され、UFC60において「マット・ヒューズVSホイス・グレイシー」が組まれた。この一戦が今日の爆発的なUFC人気の起爆剤となったのは言うまでもない。あの時、谷川貞治FEG社長がUFCに恩を売ったから、今度はダナ・ホワイト(Dana White)UFC社長が、「器量」を見せる番だ。そういう理屈で谷川貞治FEG社長は、冒頭の「男の器量を見せろ!」発言をしたのだ。

確かにこの理屈は合っている。だがある意味で他力本願だ。相手が正直者や義理人情に厚い者ならば、今回の「男の器量を見せろ!」発言を真摯に受けとめてくれるだろう。

しかし相手は今勢いに乗っているUFCなのだ。昨年FEGがホイス・グレイシーを貸し出した頃のUFCとは異なるのだ。UFCによるFEGへのマット・ヒューズの貸し出しはないと考えるのが妥当だ。

したがってダナ・ホワイト(Dana White)UFC社長には「器量」なんてものは、現時点で存在しないのだ。

谷川貞治FEG社長自身の「器量」はいかほど?

ダナ・ホワイト(Dana White)UFC社長の「器量」の無さに悔しがる谷川貞治FEG社長だが、では谷川貞治FEG社長自身の「器量」はどうなのか。現在発売中の2誌、『GONKAKU』(6月号増刊)と、『kamipro』(2007.110号)には、それぞれ谷川貞治FEG社長のインタビューが掲載されている。

それらを軽く分析してみると、収穫があった、あった。後者のインタビューにおいて「ボクは器自体がないと思ってますね。」「要するに、ボクはなんでも受け入れられるんだよねえ。」と語っている。間違いではないだろう。しかし全てその通りだとも私は思えないのだ。

それと言うのも、同じインタビューの前半部分では、「バラさん、『HERO”S』のプロデューサーやってくれないかなあ……。」と語っているからだ。この一言が、現在のHERO”Sの運営や、お飾り的な前田日明スーパーバイザーの処遇を現しているように思えてならないのだ。

この発言は、これまでPRIDE運営に尽力した榊原氏を労うリップサービスとしての意味合いが強いのだが、それを考慮してもなんか引っかかる。普通に考えたら同じ組織にいる前田日明スーパーバイザーに『HERO”S』のプロデューサーをやってもらえばいいし、それで済むことだ。

なのに外部の人間の名前を出すとは。それだからFEG・谷川貞治体制には、前田日明スーパーバイザーに大役を任せようとせぬ「器量」の無さを感じてしまうのだ。しかし今言ったことは、あくまでも憶測の域を出ないし、実際のところはどうなのかわからぬままだ。

『週刊プロレス』誌上における猪木の「器量」発言

もう一つの「器量」発言に触れる。たとえスキャンダルがあっても、それを常に興行的な盛り上げに転化させてきたのが猪木だった。負の要素の度合いが強いほど、リング上では刺激的な戦いを猪木は繰り広げてきたのだ。

しかしマット界の現状は、さに非ず。スキャンダルなことが最近はこれと言ってない状況。それを受けての「器量がないからだろうね」という猪木発言だった。

マット界の現状

マット界の現状は猪木の言葉通り、スキャンダルとは無縁で順当なマット界の流れに戻りつつある。奇しくもメジャー3団体の王者が全員ベテラン(永田、三沢、みのる)。挑戦者もほぼベテラン(新日本プロレス=越中、NOAH=佐野、全日本プロレス=TAJIRI)と完全に時計が逆回転し始めた(TAJIRIは例外)。

ベテランが活躍するのは、必ずしも悪いことではない。ただもう少しスキャンダル性を意識した戦いを前面に出すべきでは、と思う。スキャンダルがあっても転化させる、あるいは自らがスキャンダルを作り出し、それを乗り越える。そしてそれを成し得るのがプロレスラー一人一人の真剣さや「器量」なのだという猪木の教えを今こそ活かすべきなんじゃないかと感じた。