対戦要求の断わり方

「まず手始めに、U-FILEの田村潔司さん。ボクとこのリングで闘ってください。ボクは寝技日本一だから」
4.30後楽園ホール『UWAI STATION 5』 メイン終了後、田村潔司に向けて発せられた高瀬大樹選手の対戦要求だ。
時をほぼ同じくして愛知県体育館。そこでの全日本プロレス『HOLD OUT TOUR 2007 最終戦』のメイン、三冠ヘビー級選手権試合終了後に、鈴木みのる「社長? 出てこいよ武藤!」
次期挑戦者の相手として鈴木みのるが指名したのは武藤敬司。しかしその武藤敬司は姿を現さず。
こうした対戦要求は、マット界においては昔から繰り返されてきたが、実際に直面した場合、いかに対処すれば良いのか? 過去の事例を踏まえてみてゆきたい。

対戦要求への拒絶リアクション

対戦を要求された場合の拒絶リアクションはいろいろ考えられるが、ここでは以下のものを挙げておく。

  1. 無視する
  2. 自分の方が“格上”だとアピールする
  3. 反対に(相手が飲めそうもない)対戦条件を突きつける
  4. 対戦を要求してきた相手が勝てなかった選手と対戦し、勝利する

順番にみていこう。

1.無視する

対戦を要求してきた相手が、知名度・人気において自分より格下だった場合は、対戦しないことが多いようだ。それもそうだろう、勝ったところで当然に思われ、メリットがあるわけでもなし。それに知名度が低くても実力者の場合があるので、反対に負けでもしたら、自分のステイタスが地に堕ちてしまう。いわゆる「ハイ・リスク、ロー・リターン」のパターンだ。黙って対戦要求を無視するのが最善と言えよう。

代表的なものとしては、UWFインターナショナル時代の田村潔司がアピールした「真剣勝負で闘って下さい!」に対しての高田延彦の無視だ(1995.8.18東京ベイNKホール)。

2.自分の方が“格上”だとアピールする

オレ様は、おまえのような雑魚と戦う暇はないんだ、という“上から目線”で業界全体にアピールしたりすることで、わざわざ対戦する必然性がないことを強調する。かつて山本憲尚(現・山本宜久)にリング上で襲撃された小川直也がこの例。

「もう少し山本クンもプロらしくできないのか。お客さんに分からないようじゃ何もならない。あれではアマチュア」と小川直也はコメント。相手の山本憲尚(現・山本宜久)を「クン」付けで呼んでるところが、「格上」ならではの発言だ。こっち(小川直也)は分別ある大人だから、子供じみたあなた(山本憲尚(現・山本宜久))とは対戦しませんよ、ということなのだ。

だがこの小川直也の例は、襲撃も対戦と同じと解釈した場合、やられた後にこのようなコメントを発しても意味がない気もする。小川直也は、山本憲尚(現・山本宜久)に襲撃される前にしっかり念入りにアピールして、当時行動を共にしてた村上和成に護衛を徹底させるべきだった。

3.反対に(相手が飲めそうもない)対戦条件を突きつける

1.の対戦要求を無視したり、2.の言い訳がましいようなことは、格好悪くてできない。そんな場合は、この3.の(相手が飲めそうもない)対戦条件を突きつけるというリアクションをとる。すると多少は対戦する気があるように周囲からは思われる。山本宜久に殴られ挑発された永田裕志がこの例に当てはまる(新日本プロレス2005.5.14東京ドーム)。

「山本選手とやるなら、プロレスルールでやる。俺はプロレスに命賭けてる。もし本気ならしっかり勉強してこい。楽しみにしてるよ」と永田裕志はコメント。要するに総合格闘技じゃなくプロレスなら戦いますよ、と山本宜久が飲めそうもない対戦条件を逆に提示したのだった。

4.対戦を要求してきた相手が勝てなかった選手と対戦し、勝利する

これは高度なテクニックだ。A選手と対戦する必然性がないから(あるいは対戦したくないから)、A選手が勝てなかったB選手に自分が勝てば、「A選手<B選手<自分」、したがって「A選手<自分」ということになり、A選手は自ずと対戦要求を引っ込めるだろう、というもの。この例は、意図的かそうでないかの区別は量りきれないが、結果的に平直行が実践した。

平直行は、かつての教え子だった当時のシューティング(現・修斗)ヘビー級チャンピオン・川口健次から対戦を要求された。『格闘技通信』誌上で平は、川口健次との対戦に、はたしてその必然性があるのかということを訴えたこともあった。

その後、平は、1995年9月の『K-1 REVENGE』におけるヤン・ロムルダー(Jan Lomulder)戦で勝利(ベアナックルOKのVT特別ルール)。これにより、すでに第1回バーリ・トゥード・ジャパン・オープンで同じヤン・ロムルダー(Jan Lomulder)に壮絶KO負けを喫した川口健次に対しこの時点で事実上の、「対戦資格」の無いことを突きつけた形となった。因みに川口健次は1997.11.29にヤン・ロムルダー(Jan Lomulder)に3R 3”49″ スリーパー・ホールドでリベンジに成功している。

田村潔司と武藤敬司のリアクションは、どのパターン?

以上対戦要求の拒絶パターンを説明してみたが、冒頭のリード文に登場した田村潔司と武藤敬司はどのようなリアクションをとるだろうか? 田村潔司は高瀬大樹との対戦を選ばず、対戦要求を断わる方向に落ち着くと思われる。おそらく田村潔司は、1.の無視を決め込むだろう。

武藤敬司は、とりあえず今はやはり1.の無視を実践しているのかもしれぬ。だがいつかは鈴木みのると対戦する日が来るのではなかろうか。長期的にみたら武藤敬司は、鈴木みのるの対戦要求を受け入れる結果になると自分はそう思っている。