FEG「マスに通じるMMA」戦略の抱える問題

現在発売中の『Number』(681号・総合格闘技“PRIDE後”の世界。)には、FEG社長・谷川貞治氏のインタビューが掲載されている。その中で谷川貞治氏はFEGのコンセプトはマスに通じるMMA」と述べているが、はたしてこれは現状の総合マット界において問題ないのだろうか?

「UFCと対等に口をきけない」日本総合マット界

現在の総合マット界は、潤沢な資金のあるところが覇権を握る仕組みになっている。UFCがPRIDEを傘下に治めたのはその典型であり、団体も選手も圧倒的な資金力で吸い上げられてしまうのだ。

これを実行されてしまうと、日本総合マット界は太刀打ちできない。強い人気選手を慰留させるに必要なファイト・マネーの提示が困難だからだ。それがゆえに『Number』(681号・「総合格闘技“PRIDE後”の世界。」特集 以下文中表記は『Number』)で谷川貞治氏は「UFCは全く困っていない。(途中省略)対等に口なんてきけない状態です、いまは」と語っているのだ。

FEGのUFCへの対抗措置

資金力あるUFCへの対抗措置として谷川貞治氏は同じく『Number』で次のようにも述べている。

FEGのコンセプトはマスに通じるMMAです。そこでUFCをコアへコアへと追い込んでしまえと思っています。

(途中省略)

アメリカに出て行くのもマーケットがあるからという意味だけではないわけで、選手を生かす、自分たちのコンテンツを作るという意味ですね。

(途中省略)

だからもし引き抜かれたら、新しいスターを作るしかしょうがないですよね。

『Number』(681号・「総合格闘技“PRIDE後”の世界。」特集 株式会社文芸春秋)P37より抜粋

FEGは大衆向けで、UFCはマニアック向けだ。UFCがHERO”Sから人気選手を引き抜いたとしても、FEGには選手育成やコンテンツ作りのノウハウがある。だから何度引き抜かれても、その度に新しいスター選手を作る。要約するとこういうことなのだ。

UFCへの対抗措置&「マスに通じるMMA」の問題点

しかしスター選手は一日で作れるものではない。ある程度の時間が必要で、コストがかかる。その上ただ強ければスター選手になれるというものでもない。

ここでよくよく考えてみよう。「マスに通じるMMA」にするためには、スター選手が絶対に必要だ。あるいは『Number』で谷川貞治氏が言うところの「なんだかわからない大物選手」がいなきゃいけない。

だがそのスター選手、「なんだかわからない大物選手」を引き抜かれたら、その時はどうするのだろう。彼らが不在だったら、「マスに通じるMMA」にならないではないか。彼らの次の2番手、3番手選手をスター選手として抜擢しても、大衆に届かせるには、まだ役不足のところがあるし、前述の通り時間がかかる。

そうなると新しいスターを作るだけでなく、金に目がくらまない情に厚い選手の育成や囲い込みも重要になってくるだろう。でも現実問題として今の総合マット界には、そんな選手はそう多くはいない。まして外国人ファイターともなれば、なおさらだ。

ブロック・レスナー(Brock Edward Lesnar)の引き抜きに厳重注意!

以上、現時点でのFEG「マスに通じるMMA」戦略について簡単に述べてみた。今後もFEGは、UFCの脅威から100%解放されることは考えられにくいが、まずは『Dynamite! USA』で総合デビューを果たしたブロック・レスナーを引き抜かれぬよう、確実に手を打つべきだ。ブロック・レスナーがUFCに渡ったら、総合マット界のバランスは一方的となり、FEGに逆転の目は完全にないだろう。