総合マット界は“一本釣り”の時代に突入!

ミルコ・クロコップに続いてUFCの触手が伸びた先はアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラだった。この引き抜きはノゲイラ(Antonio Rodrigo “Minotauro” Nogueira)が所属していたBTT(Brazilian Top Team)のメンバーさえも寝耳に水であった。

プロレス・格闘技マスコミは、この度のUFCによるアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラのみの引き抜きを“一本釣り”と表現。まさにアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラは、UFCからすれば、大物マグロのような存在だったのだろう。

今回はこの“一本釣り”について書いてみたい。

“一本釣り”により選手は集団から個の単位へ

UFCPRIDE同盟締結」当初、UFCとPRIDEの2リーグ制で、しかるべき時に互いの選手同士を対戦させる、ということだったはず。しかし今回のアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラのような“一本釣り”が続くと、UFCとPRIDEの戦力バランスは崩れてしまう。これだと日本人ファンが望むPRIDEの世界観を放棄することになるのではないか。

しかし仮にPRIDEの世界観を放棄することになったとしても、UFCは困らない。なぜなら地上波TV局がバックにつかなければ、利潤が生まれぬ日本マット界よりは米国マット界だ、とUFCは考えているようだからだ。たぶんそうなんだと思う。だからこそPRIDEにそのままアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラを残させずに“一本釣り”を敢行したのだ。ぶっちゃけPRIDEよりもUFC本隊なんだろう。

だから今後は、UFCは良質な選手をさらに集め、地味な選手、弱い選手はオクタゴンに上げないようになるだろう。そのためには選手の篩い分けが必要になり、その結果ユニット、チーム単位だったのが、選手一人という「個」の単位へと変移し、“一本釣り”もやむなし、ということになってくるのだ。総合マット界は今後、選手は「集団」から「個」へと変移してゆくものと考えられよう。

“一本釣り”のメリット・デメリット

まず“一本釣り”のメリットについて。UFC側からみれば、良質な選手だけを獲得してゆくのだから、単純に考えれば、しょっぱい試合の減少が見込めそうだ。また興行の度にかかっていたチーム・メンバーの経費が、「個」に変移すればトータル人数は減るので、経費は減少できそうだ。

反対に“一本釣り”のデメリット。選手のファイトマネーの高騰がありえよう。“一本釣り”なのだから、それまでより高待遇を保障しなければ釣れない。したがってファイトマネーは上がらざるを得ないだろう。これ以外には、選手の育成が疎かになる可能性が高いこと、谷川貞治氏が言うように、運営側による「選手の使い捨て」が顕著になるのではないかということだ。

“一本釣り”の時代とは?

結局のところ、“一本釣り”は何かというと、「一流ファイターのメジャー(UFC)流出」ということだ。従来の経営形態と異なり、言葉は悪いが、大富豪がパトロンみたいになって、自分のお気に入りのファイターを囲い込み、試合をさせるような時代に突入したと言える。そんな時代においては、“一本釣り”はルーティン・ワークになってしまうのかもしれない。