総合マット界はエージェント・ライセンス制の確立が急務

夏に囁かれた「五味隆典選手、HERO”Sマット参戦」の噂。しかしそれはいまだ実現していない。その背景には、複雑なパワー・バランスの上に成り立っている現在の総合マット界はもちろんのこと、ブッカーの影響もあるらしい。今回はその陰の存在であるブッカーについて取り上げてみたい。

総合マット界への影響力を持つブッカーという職業

通常、選手の招聘に関わる業務は、ブッカーと呼ばれる人たちが手がけている。本来選手をブッキングするから、ブッカーなのだが、現在の総合マット界においては、その範疇に留まらない。ブッキングのみならず、代理人的業務や選手のマネジメント等も手がけていたりで、総合マット界への影響力が、我々ファンの思っている以上に強いようなのだ。

実質、現在の総合マット界は、「団体」、「ブッカー」、「選手」の3権と言われても強ち間違いではないくらいに、ブッカーの影響力は強大なのかもしれない。

現在発売中の『Real Fight Magazine Battle Talk』(モッツ出版株式会社 フリーラン10月号別冊)の「谷川貞治インタビュー」では、そうしたブッカーの影響力が伺いしれる下りが出ているので、引用してみる。

外国人選手は基本的にジムの会長さんとお話しすることが多いので、結果的にブッカーというかエージェントというか、そういう人を間に挟んでいるような状態になってしまうんですけどね。そこで選手にきちんとファイトマネーが伝わっていなかったりとか、トラブルが起こることも事実です。そういったジムとのトラブルで選手が移籍してしまったり、ということはありますね

『Real Fight Magazine Battle Talk』(モッツ出版株式会社 フリーラン10月号別冊)P30「谷川貞治インタビュー」より引用

ブッカーが間に入ることで、選手との円滑な交渉コミュニケーションが阻害される場合があることをこのインタビューは示唆している。これでは一体何のためのブッカーなのか、という疑問が出てきても不思議ではない。

選手と直接やり取りしたい団体側

同誌「谷川貞治インタビュー」で言うところの選手にきちんとファイトマネーが伝わっていなかったりというのは、ブッカーの取り分、すなわちマージンが絡んでくるからなのだろう。

ブッカーはボランティアでやってるわけではないから、手数料として自分のマージンを含めるのは当たり前。だから団体の提示額より低いファイトマネーの額を選手やジム会長にブッカーが伝えることは想像に難くない。従ってファイトマネーの団体提示額とブッカー通達額の差異が出てきて、トラブル発生に繋がってしまうこともあるのではなかろうか。

現在フリーでやられてるブッカーの人たちは、元々団体・興行会社の社員だったケースがほとんど。以前なら給料の範囲で済んだものが、彼らが独立しフリーのブッカーになってしまったことで、そのブッカーのマージンも加算したファイトマネーを団体・興行会社は提示しなくてはならなくなった。

つまり団体側としては以前よりコストがかかるようになり、かつ前述のように選手との円滑な交渉コミュニケーションに支障をきたす場合も出てきたというわけだ。ブッカーを介さず、選手と直接やり取りしたいと団体側が考えるのは自然な思いなのかもしれない。

総合格闘技のメジャー化にはエージェント・ライセンス制度が必要

総合格闘技というジャンル自体まだ歴史が浅く、業界整備が立ち遅れてる現状がある。最初の方で述べたように、本来選手招聘がブッカーの業務なのに、選手の方向性やマネジメントにまで口を挟んだりするのが横行していることからもそれはわかるだろう。

その上、真偽のほどは不明だが、“企業スパイ”だった人間が現在もブッカーをやっているとの噂があったりで、こうした人間が許されているとなると、このジャンル自体が蔑まれてしまう恐れもある。

総合格闘技メジャー化のためには業界整備をしっかり行い、『Real Fight Magazine Battle Talk』「谷川貞治インタビュー」で言及されたエージェント・ライセンス制度について議論を進めるべきなのではあるまいか。

そしてどこがイニシアティブを取るのかわからぬが、将来的には協会なり連盟なりがエージェント・ライセンス制度を確立させるべきなのではなかろうか。