前田日明リングス総帥が模索する第2次リングスの運営形態とは?

前田日明リングス総帥による第2次リングスの運営形態が徐々に明らかになってきた。『格闘技通信』誌上でのインタビュー、またリングスファンミーティングでも言及していたのだが、その運営形態の中核は「興行債券」というもの。これがうまくいけばUFCとも互角に張り合えるとのこと。はたしてそれはどのようなものなのか。債券の簡単な説明を経て前田日明リングス総帥の模索する構想について触れてみたい。

債券とは何なのか?

一応、私は経済学部出身なのだが、恥ずかしながら債券については全く知識がない。なので今回この文章を書くにあたり、ちょっと調べてみた。

まず債券とは何なのか? 債券とは「債権・債務関係」+「券(証券)」であり、金の貸借を明らかにした「借用証書」であるとのこと。「さいけん」という言葉を聞くと、大半の人は「債権」という字を思い浮かべることかと思う。しかし今回触れる「さいけん」は「債券」の方である。

我々にとって一番身近な借用証書はというと、銀行ローンで金を借りる際に交わされるものだが、以下はこの銀行ローンを例に出し、通常の借用証書と債券を比較して、その違いをみてみる。

借用証書(銀行ローン)と債券の違い

借用証書(銀行ローン)と債券の違いを別表にまとめたのでご覧頂きたい。

【別表:借用証書(銀行ローン)と債券の違い】

区分・項目 貸し手 借手 「借り手」
「貸し手」の関係
転売
借用証書
(銀行ローン)
預金者 金を借りたい人や企業 1 対 1 不可
債券 投資家 発行体(=発行者)と呼び、
やはり金を借りたい人や企業
1 対 複数
(1 対 多数)
可能

別表を補足すると以下のようになる。

■  借用証書(銀行ローン)の場合
銀行は、大勢の人や企業から「銀行預金」として金を集め、その集めた金を元手に金を借りたい人や企業に貸し付ける。
■  債券の場合
銀行ローンの預金者にあたる人を、債券の場合は「投資家」と呼ぶ。そして銀行ローンの借り手にあたる人を「発行体(=発行者)」と呼ぶ。
債券を発行する際、まず借り手の「発行体」は証券会社を通じて、債券の買い手(=投資家)を探してもらう。取引が成立すると、投資家は証券会社を通じて債券を購入

銀行ローンに代表される借用証書は、「借り手」と「貸し手」が1対1の関係

それに比べ債券は、「借り手(=発行体)」と「貸し手(=投資家)」が1対複数(多数)になる。そのため債券には貸し手の名前は明記されていない。この特色によって債券は、市場を通じて転売が可能である(債券取引)。

債券は「ゼロクーポン債」を除き、クーポン(利子)がつく。クーポンを裏づけとして、半年あるいは1年に1回、一定額の利子が必ず投資家に支払われる。
因みに株は、発行体(=株式会社)の業績によって配当金の額が増減したり、支払われないこともある。

前田日明=第2次リングスが着手しようとする「興行債券」

債券の説明がやや長くなってしまった。映画業界では、すでにこうした仕組みを利用し、「興行債券」で資金を集めていることもあるようだ。前田日明=第2次リングスも、まさにこの「興行債券」に着手し、運営していこうと考えているのだ。

以下は『格闘技通信』( No.431 2007.10.23 「新RINGS×HERO”S=真のメジャー格闘技」へ)における前田日明リングス総帥インタビューからの引用文だ。

社会的信用を得たら何ができるかっていうと、海外でやっているように、興行債権を一流証券会社で組める。野村証券とかモルガン・スタンレーとか一流の証券会社と組んで興業債権で集めた潤沢な資金を元にいい選手を呼んで、すごい試合を組める。そうしたらUFCと張り合えるよ。

(『格闘技通信』No.431 2007.10.23 「新RINGS×HERO”S=真のメジャー格闘技」へ P61から引用)

『マット界をキャプチュード!』編集部註:
同誌文中においては「興行債権」と表記されているが、これは誤植で「興行債券」が正しい。

この「興行債券」のメリットは、前述の通り「借り手(=発行体)」と「貸し手(=投資家)」が1対複数(多数)であることから、不特定多数の人・企業からの資金調達が可能になることだ。従来の特定少数の企業による協賛スポンサーの資金調達では、せいぜい数社合わせて数億円が限界なのに対し、「興行債券」の場合は、一流証券会社と組み、さらに上回る額を調達することも可能である。

その上、各投資家・各企業は、自分の懐具合に応じて「興行債券」を購入し、投資すればいいのだから、スポンサーになるより負担が軽減されるだろう。

前田日明=第2次リングス成功の鍵は米国でのPPV獲得!?

今後前田日明=第2次リングスが、どのような具体的な順序や動きで「興行債券」の領域に着手するのかわからない。

けれども日本市場より米国市場を相手にするのではなかろうか。それというのも米国は、世界で最も巨大な債券市場だからだ。

米国は、債券発行による資金調達が、銀行借り入れよりも盛んだった歴史があり、格付け機関による債券の格付けが行われたり、決済システムが整備されたり等、取引のためのインフラも整っている。そんな訳でまずは米国に進出することが、優先課題になるのではないかと思われる。

また前田日明リングス総帥が米国に拘る別の理由として、PPVが挙げられる。米国でのPPV獲得が、将来的には同国で発売されるであろうリングスの「興行債券」の購入促進に繋がりそうで、前田日明=第2次リングス成功の鍵になると思われるからだ。実際、リングスファンミーティングでも前田日明リングス総帥は、米国でのPPV獲得が目標だと言っていた。

例えば、米国でリングスの試合がPPVで流れ、認知されたとする。「UFCみたいなことをやってるけど、グラウンドではより動きがあって、パウンドでなく、サブミッションで決着がついて、UFCより面白いな~!」と評価されたら、米国の一般投資家がリングスの「興行債券」を購入することも十分に有りえよう。

以上のことは、実現するまで時間がかかるかもしれないが、我々リングス・ファンは、引き続き地道に応援してゆきたいと思う。