前田日明リングス総帥、論語を語る

11月29日(土)、二松学舎大学・九段キャンパス中州記念講堂(東京都千代田区三番町)で開催された「自分になる為の『論語』」。ゲストは、過去に『闘為論語』(東芝EMI TOCZ-5063、リリース年:1989、価格:税込2,800円、朗読:前田日明、構成・監修・解説:高橋いづみ、音楽:山口龍夫)をリリースした我らが前田日明リングス総帥。前田日明リングス総帥が自身のこれまでの半生で実践してきた論語を語った。大まかであるが、レポートしてみたい。

前田日明『闘為論語』CD

自分になる為の『論語』 ゲスト=前田日明 二松学舎大学・九段キャンパス

前田日明リングス総帥の論語シンポジウム

「現代に活きる『論語』」での前田日明リングス総帥と白井雅彦氏の対談風景
「現代に活きる『論語』」での対談風景

今回のシンポジウムは、前田日明リングス総帥が自らの半生で実践してきた論語を対談形式で語るというもの。対談者は前田日明ファンであり、格闘技への造詣が深い白井雅彦氏(二松学舎大学非常勤講師)。以下おおまかな内容を示してみたい。

前田日明リングス総帥による対談冒頭の語り

前田日明リングス総帥による対談冒頭の語りはおおまかにいうと以下のような内容。

元々戦前の日本には儒教精神があった。しかし必ずしも軍国主義とは一体ではなく、別々に論じられるものであるにもかかわらず、戦後、軍国主義の解体に伴い、古き良き儒教精神が衰退。

「現代に活きる『論語』」で対談する前田日明リングス総帥
「現代に活きる『論語』」で対談する
前田日明リングス総帥

現代の諸問題-後期高齢者の切り捨て、いじめ、義務を放棄し権利ばかり主張する「はき違えた自由主義」の横行、等々-の噴出は、この儒教精神の衰退とあながち無関係ではあるまい。

現在の日本は、そういう意味では警鐘を鳴らす時期なのではなかろうか。

前田日明リングス総帥、朋友論、師弟論を語る

いよいよ前田日明リングス総帥が現実に活かしてきた論語を語ることに。本家『論語』は様々なチャプターに分かれているのだが、このシンポジウムでは主に「朋友」論、「師弟」論の観点から前田日明リングス総帥に語ってもらっていた。

前田日明リングス総帥の論語・朋友論

まずは本家『論語』原文及び訳文をご覧頂きたい。

【原文】
学而時習之、
不亦説乎。
有朋自遠方来、
不亦楽乎。
人不知而不慍、
不亦君子乎。
【訳文】
学んだ機会にやってみる。
やはりうれしいことではないか。
友だちが、遠くの国から訪ねてくれる。
やはり楽しいことではないか。
人が理解をしなくても、恨みはしない。
やはり立派なことではないか。

『論語 口語訳』(著:樹玄龍輝、宝島社文庫)学而第一 一より引用

前田日明リングス総帥にとっての「有朋自遠方来」はアレクサンドル・カレリンだ。当初は対戦実現が不可能と思われた。

対戦するかしないかわからぬままで迎えた試合当日、「前田はペレストロイカで食えなくなったロシアの格闘技選手に対して、夢と希望と毎日の生活を与えてくれた。アナタはロシアで英雄と呼ばれているけど、そういうロシアの恩人に対して、何も思わないのか?」(株式会社ベースボールマガジン社発行『格闘技通信』2008.12 No.452 P46から引用)とリングス・ロシア代表のウラジミール・パコージン氏が泣きながら対戦実現のために説得にあたったのはご承知の通り。もちろんヴォルク・ハンらリングス・ロシアの選手たちの尽力も忘れてはならない。

他にはリングス・オランダ代表クリス・ドールマンも挙げていた。

【原文】
奢則不孫、倹則固。
與其不孫也、寧固。
【訳文】
贅沢すれば不遜になり、倹約すれば固執する。
だが、不遜であるより、まだ固執がよかろう。

『論語 口語訳』(著:樹玄龍輝、宝島社文庫)述而第七 三十五より引用

新生UWFの空中分解により、たった一人になってしまった前田日明。そんな状況にもかかわらず、クリス・ドールマンがリングス参戦を決断した。不誠実が嫌いな性分で頑固者のクリス・ドールマン。まさに上記の「與其不孫也、寧固」そのものだ。

前田日明リングス総帥の論語・師弟論

これもまずは本家『論語』原文及び訳文をご覧頂きたい。

【原文】
顔淵、喟然歎、曰、
仰之彌高、
鑽之彌堅、
瞻之在前、
忽焉在後、
夫子、循循善誘人、
博我以文、
約我以禮。
欲罷不能、
既竭吾才、
如有所立卓爾、
雖欲從之、
末由也已。
【訳文】
顔回は、ためいきをついて残念がり、言った。
「見上げれば、なお崇高で、
切り込めば、なお硬堅で、
目前にいらっしゃるかと思えば、
たちまち背後にいらっしゃる。
先生は、順序立ててみごとに人を誘い、私を文化で幅ひろげ、
私を礼節でまとめてくださる。
やめようにもやめられず、
もう自分の才能をつくしているが、
先生がいるところは高みにしっかりしているようで、
ついて行こうと思っていても、
なかなか近づけさえしないのだ。」

『論語 口語訳』(著:樹玄龍輝、宝島社文庫)子罕第九 十一より引用

前田日明リングス総帥らの師匠、カール・ゴッチがここでいうところの仰之彌高、鑽之彌堅、瞻之在前、忽焉在後…だ。弟子からすれば超越した存在以外の何者でもない。

アメリカ・マット界を干されたカール・ゴッチはハワイでゴミ収集業に従事。その際いかに効率よい手順で担当エリアを早く回るかを考えに考え抜いた。その結果カール・ゴッチのチームは1番となり、アメリカ本土からも表彰されるに至ったエピソードを前田日明リングス総帥は披露(関連記事:「ゴッチイズム伝承は日本マット界の使命だ!」)。

自分の望まぬ状況下でも物事を突き詰め、屈することなく楽しもうとするカール・ゴッチの姿勢は雖欲從之、末由也已。なのだ。

【原文】
子曰、
不憤、不啓。
不?、不發。
擧一隅而、不以三隅反、
則、吾不復也。
【訳文】
先生は言った、
「意欲がなければ、教示しない。
努力がなければ、指導しない。
一端を挙げたら残りの三端にも気づくのでなければ、
私はもう繰返さない。」

『論語 口語訳』(著:樹玄龍輝、宝島社文庫)述而第七 八より引用

教える側にも弟子を選ぶ権利がある。カール・ゴッチは前田日明を選び、また前田日明もカール・ゴッチを選んだのだ。

「やりたいのならやりなさい」
「やりたくないのなら帰りなさい」
「やるんだったら全身全霊でやりなさい」
以上は全てカール・ゴッチの言葉だ。

全部教えてくれると思ったら大間違い。教えてもらう側は習得するための「ポケット」を作らないと、せっかく教えてもらったことは身につかない。そう前田日明リングス総帥は語った。

現代でも論語は活きる!

以上駆け足で、前田日明リングス総帥が自身の半生において実践してきた論語をWEB上で再現してみた。会場で実際に前田日明リングス総帥の話を聴いてみて思ったことは、『論語』は決して古臭いものではなく、現代でも活きるし、しっかり通用するものだということ。個人・社会の規範が崩れかけている現在の日本において極めて有効なツールであると思った。

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